秋田地方裁判所 昭和49年(わ)20号 判決 1974年11月08日
本籍
秋田県雄勝郡稲川町大館字城面一三番地
住居
同右
会社役員
阿部雄二
大正一二年五月一七日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官藤河征夫・弁護人伊藤彦造各出席の上審理を遂げ次の通り判決する。
主文
被告人を懲役一年六月及び罰金三、〇〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
懲役刑については本裁判確定の日から三年間その執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、秋田県雄勝郡稲川町大館字城面六番地及び同県平鹿郡増田町増田字下川一五四番地の二等に工場を設け、仏壇の製造・販売業を営んでいたものであるが、所得税を免れる目的で、売上を除外するなどの方法によつて得た資金を架空名義で預金するなどの不正の手段により、
第一、昭和四五年一月一日から同年一二月三一日までの昭和四五年分における実際の所得金額は六、一三九万六、九四九円で、これに対する所得税額は三、四九〇万〇、三〇〇円であるのにもかかわらず、昭和四六年三月八日、湯沢市字湯ノ原二〇八番地の五所在の所轄湯沢税務署において、同税務署長に対し、同年分の所得金額は八六〇万円で、これに対する所得税額は二五九万〇、二〇〇円である旨虚偽の確定申告書を提出し、もつて同年分の正規の所得税額三、四九〇万〇、三〇〇円との差額三、二三一万〇、一〇〇円をほ脱し、
第二、昭和四六年一月一日から同年一二月三一日までの昭和四六年分における実際の所得金額は一億二、三二〇万五、一一六円で、これに対する所得税額は七、九五一万五、七〇〇円であるのにもかかわらず、昭和四七年三月二日、前記湯沢税務署において、同税務署長に対し、同年分の所得金額は二、五八五万五、〇〇〇円で、これに対する所得税額は一、一七六万五、一〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて同年分の正規の所得税額七、九五一万五、七〇〇円との差額六、七七五万〇、六〇〇円をほ脱し、
第三、昭和四七年一月一日から同年一二月三一日までの昭和四七年分における実際の所得金額は一億三、一八八万四、三七〇円で、これに対する所得税額は八、六一八万〇、五〇〇円であるのにもかかわらず、昭和四八年三月九日、前記湯沢税務署において、同税務署長に対し、同年分の所得金額は七、六五〇万九、三七九円で、これに対する所得税額は四、四八六万〇、七〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて同年分のの正規の所得税額八、六一八万〇、五〇〇円との差額四、一三一万九、八〇〇円をほ脱し
たものである。
(証拠の標目)
全部の事実について
一、被告人の当公判廷における供述
一、被告人の検察官に対する昭和四九年二月一二日付・同月一三日付・同月一五日付各供述調書
一、被告人の大蔵事務官に対する昭和四八年三月二六日付・同月二七日付・同月二八日付各質問てん末書
一、被告人の大蔵事務官に対する昭和四八年四月二三日付質問てん末書
一、被告人の大蔵事務官に対する昭和四八年五月一六日付質問てん末書
一、被告人の大蔵事務官に対する昭和四八年六月一三日付(三)質問てん末書
一、被告人の大蔵事務官に対する昭和四八年七月二五日付・同月二六日付(二)・同月三〇日付各質問てん末書
一、被告人の大蔵事務官に対する昭和四八年八月一日付・同日付(二)・同日付(三)・同日付(四)・同日付(五)・同月二日付(一)・同日付(二)・同月九日付各質問てん末書
一、被告人の大蔵事務官に対する昭和四八年九月一一日付・同月一二日付、同月一七日付、同月一九日付・同月二六日付(二)・同月二八日付(一)・同日付(二)・同日付(三)・同日付(四)・同月二九日付(一)・(二)各質問てん末書
一、被告人の大蔵事務官に対する昭和四八年一〇月五日付質問てん末書
一、被告人作成の昭和四八年九月二五日付(一)・同日付(二)各上申書
一、谷藤良助の大蔵事務官に対する昭和四八年三月二六日付質問てん末書
一、根元忠市の大蔵事務官に対する昭和四八年三月二八日付質問てん末書
一、石田清治の大蔵事務官に対する昭和四八年三月三〇日付質問てん末書
一、加藤平明の大蔵事務官に対する昭和四八年九月二〇日付質問てん末書
一、沓沢三朗の大蔵事務官に対する昭和四八年三月二九日付質問てん末書
一、渡部純之助の大蔵事務官に対する昭和四八年六月六日付質問てん末書
一、木村キヱの大蔵事務官に対する昭和四八年六月九日付質問てん末書
一、伊藤ヤヱの大蔵事務官に対する昭和四八年六月八日付質問てん末書
一、小林アイの大蔵事務官に対する昭和四八年六月七日付質問てん末書
一、関口フチの大蔵事務官に対する昭和四八年六月一二日付質問てん末書
一、赤松イワの大蔵事務官に対する昭和四八年六月七日付質問てん末書
一、阿部貞雄の大蔵事務官に対する昭和四八年六月二八日付質問てん末書
一、山田宗一郎の大蔵事務官に対する昭和四八年六月一一日付質問てん末書
一、清野道雄の大蔵事務官に対する昭和四八年六月七日付質問てん末書
一、萩野荘三の大蔵事務官に対する昭和四八年六月三〇日付質問てん末書
一、市川一三の大蔵事務官に対する昭和四八年七月二日付質問てん末書
一、沓沢三朗作成の昭和四八年三月三〇日付上申書
一、石山清作成の昭和四八年三月二七日付上申書
一、佐々木正二郎作成の昭和四八年三月二七日付上申書
一、千葉秋雄作成の昭和四八年三月二八日付上申書
一、大蔵事務官高橋一康作成の昭和四八年一〇月一三日付脱税額計算書類説明資料
一、大蔵事務官高橋一康作成の昭和四八年八月六日付銀行調査書
一、大蔵事務官佐藤栄吉作成の昭和四八年九月一九日付預金残高及び受取利息の調査書
一、大蔵事務官高橋一康作成の昭和四八年九月二七日付受取手形調査書
一、大蔵事務官佐藤栄吉作成の昭和四八年九月二六日付土地取得調査書
一、大蔵事務官下山紘迩作成の昭和四八年九月二七日付車輛・機械・工具・備品調査書
一、大蔵事務官細根正成作成の昭和四八年九月二七日付借入金等調査書
一、大蔵事務官下山紘迩作成の昭和四八年九月二七日付借入金等調査書
一、大蔵事務官高橋一康作成の昭和四八年九月二八日付売上調査書
一、大蔵事務官細根正成作成の昭和四八年九月二八日付仕入調査書
第一の事実について
一、被告人の大蔵事務官に対する昭和四八年七月二六日付(一)・同年九月二六日付(一)・同月二九日付(一)各質問てん末書
一、古関キン子の大蔵事務官に対する昭和四八年四月二三日付質問てん末書
一、佐藤吉太郎の大蔵事務官に対する昭和四八年四月二六日付質問てん末書
一、高橋新一作成の取引内容本表と題する書面
一、大蔵事務官下山紘迩作成の昭和四八年一〇月一三日付脱税額計算書(一)・(二)
一、大蔵事務官高橋一康作成の昭和四八年九月二九日付建物の取得等調査書
一、押収にかかる昭和四五年分の所得税の確定申告書一通(昭和四九年押第一九号の一)・昭和四五年分の所得税の修正申告書一通(同号の二)の各存在
第二の事実について
一、被告人の大蔵事務官に対する昭和四八年六月一三日付(一)・同年七月二六日付(一)・同年九月二六日付(一)・同月二九日付(一)各質問てん末書
一、被告人作成の昭和四八年九月一〇日付上申書
一、阿部文雄の大蔵事務官に対する昭和四八年九月二七日付質問てん末書
一、川幸一の大蔵事務官に対する昭和四八年七月一日付質問てん末書
一、徳永順二の大蔵事務官に対する昭和四八年六月三〇日付質問てん末書
一、布清太郎の大蔵事務官に対する昭和四八年六月三〇日付質問てん末書
一、奥村六郎の大蔵事務官に対する昭和四八年六月二八日付質問てん末書
一、佐藤吉太郎の大蔵事務官に対する昭和四八年四月二六日付質問てん末書
一、石川タマの大蔵事務官に対する昭和四八年四月二四日付質問てん末書
一、荒川勲作成の昭和四八年三月二九日付上申書
一、斉藤雄蔵作成の昭和四八年九月二九日付上申書
一、高橋新一作成の取引内容本表と題する書面
一、大蔵事務官下山紘迩作成の昭和四八年一〇月一三日付脱税額計算書(三)・(四)
一、大蔵事務官高橋一康作成の昭和四八年九月二九日付建物の取得等調査書
一、押収にかかる昭和四六年分の所得税額の確定申告書一通(昭和四九年押第一九号の三)の存在
第三の事実について
一、被告人の大蔵事務官に対する昭和四八年六月一三日付(一)・同年八月三日付各質問てん末書
一、被告人作成の昭和四八年八月九日付上申書
一、谷藤良助の大蔵事務官に対する昭和四八年三月二八日付質問てん末書
一、阿部文雄の大蔵事務官に対する昭和四八年九月二七日付質問てん末書
一、沓沢鉄二の大蔵事務官に対する昭和四八年八月一日付質問てん末書
一、川幸一の大蔵事務官に対する昭和四八年七月一日付質問てん末書
一、徳永順二の大蔵事務官に対する昭和四八年六月三〇日付質問てん末書
一、布清太郎の大蔵事務官に対する昭和四八年六月三〇日付質問てん末書
一、奥村六郎の大蔵事務官に対する昭和四八年六月二八日付質問てん末書
一、古関キン子の大蔵事務官に対する昭和四八年四月二三日付質問てん末書
一、川村菊治の大蔵事務官に対する昭和四八年三月三〇日付質問てん末書
一、釜田英太郎の大蔵事務官に対する昭和四八年三月二九日付質問てん末書
一、児玉キノの大蔵事務官に対する昭和四八年四月二七日付質問てん末書
一、釜田順吉の大蔵事務官に対する昭和四八年三月二九日付質問てん末書
一、佐藤徳朗作成の昭和四八年三月二八日付上申書
一、大蔵事務官下山紘迩作成の昭和四八年一〇月一三日付脱税額計算書(五)
一、大蔵事務官下山紘迩作成の昭和四八年一〇月六日付未納事業税計算書
一、押収にかかる昭和四七年分の所得税の確定申告書一通(昭和四九年押第一九号の四)・昭和四七年分所得税青色申告決算書(同号の五)の各存在
(法令の適用)
被告人の前示各所為は、所得税法第二三八条第一項・第一二〇条第一項第三号に各該当するので、情状に照し懲役刑及び罰金刑を併科することとし、前示各罪は刑法第四五条前段の併合罪の関係にあるので、懲役刑については同法第四七条本文・第一〇条に従い最も犯情の重い第二の罪の刑に法定の加重をなした刑期範囲内で処断することとし、罰金刑については所得税法第二三八条第二項を適用し刑法第四八条第二項に従いその合算額の範囲内で処断することとし、被告人を懲役一年六月及び罰金三、〇〇〇万円に処し、被告人が右罰金を完納出来ない時は刑法第一八条により金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、懲役刑については刑法第二五条第一項を適用し本裁判確定の日から三年間その執行を猶予することとする。
よつて主文の通り判決する。
(裁判官 篠原昭雄)
右は謄本である。
昭和四九年一一月一二日
前同庁
裁判所書記官 池田利英